定年後再雇用で労働時間を短縮できる?フルタイムから短時間勤務への変更を弁護士が解説【定年後再雇用シリーズ第9回】

労働

定年後に再雇用される際、賃金だけでなく、労働時間が変更されることがあります。

例えば、

  • 定年前は1日8時間勤務だったが、再雇用後は1日6時間勤務になった
  • フルタイム勤務から短時間勤務になった
  • 週5日勤務から週3日勤務になった
  • 会社から「再雇用後は勤務日数を減らしてほしい」と言われた
  • 再雇用後に、会社から一方的に勤務時間を変更された

といったケースです。

定年後再雇用では、定年前と比べて勤務時間や勤務日数を減らす制度を設けている会社も少なくありません。

しかし、ここで問題になるのが、

「会社は定年後再雇用を理由に、自由に労働時間を短縮できるのか」

という点です。

また、労働時間が短くなれば、当然に賃金も大幅に減額されるのでしょうか。

今回は、定年後再雇用における労働時間の変更について、労働者側・企業側の双方から解説します。


1 定年後再雇用では労働時間を変更することがある

定年後再雇用制度では、定年前と同じ勤務時間・勤務日数で働く「フルタイム再雇用」だけでなく、労働時間を短縮する制度が設けられていることがあります。

例えば、

  • 1日8時間勤務から1日6時間勤務へ変更する
  • 週5日勤務から週4日勤務へ変更する
  • 週5日のフルタイム勤務から週3日の勤務へ変更する
  • 午前中のみ勤務する
  • 繁忙日のみ勤務する

といった働き方です。

定年後は、労働者の健康状態や生活状況への配慮が必要になる場合もあります。

また、企業側としても、定年前と同じ役職や責任を負わせるのではなく、勤務時間や業務内容を限定した働き方を設けることがあります。

そのため、定年後再雇用に伴って労働時間を変更すること自体は珍しいことではありません。


2 定年後再雇用になったからといって、一方的に労働時間を変更できるわけではない

もっとも、ここで注意しなければならないのは、

「定年後再雇用だから会社が自由に労働時間を決められる」わけではない

ということです。

定年後再雇用では、通常、定年によって従前の雇用関係が終了した後、再雇用について新たな労働条件が定められます。

そのため、再雇用契約を締結する段階で、

  • 労働時間
  • 勤務日数
  • 始業・終業時刻
  • 休日

などについて、定年前とは異なる条件を定めること自体は可能です。

例えば、労働者が、

定年後は週3日勤務を希望する

という場合に、その条件で再雇用契約を締結することに問題はありません。

しかし、重要なのは、どのような条件で再雇用するのかについて、会社が適切に条件を提示しているかという点です。


3 まず問題になるのは「再雇用時の変更」か「再雇用後の変更」か

労働時間の問題を考える際には、まず、

① 再雇用契約を締結する際に労働時間を変更したのか

それとも、

② 再雇用された後に労働時間を変更したのか

を区別する必要があります。

この二つは、法的な問題が異なります。


4 再雇用時に労働時間を変更する場合

例えば、定年前は、

週5日・1日8時間勤務

だった労働者について、再雇用後は、

週4日・1日6時間勤務

という条件を提示する場合を考えてみましょう。

この場合、再雇用契約を締結する際に、労働時間を含む新たな条件が提示されることになります。

定年後再雇用では、定年前と全く同じ労働条件を維持しなければならないとは限りません。

したがって、定年前とは異なる勤務時間を条件として再雇用契約を締結すること自体が、直ちに違法になるわけではありません。

ただし、会社としては、

  • どのような勤務時間となるのか
  • 勤務日数は何日なのか
  • 賃金はいくらなのか
  • 業務内容はどのようなものなのか

をできるだけ明確に提示することが重要です。

労働者としても、「再雇用されること」だけに注目するのではなく、実際にどのような働き方になるのかを確認する必要があります。


5 再雇用後に会社が労働時間を変更する場合は別の問題

これに対し、既に再雇用契約を締結しているにもかかわらず、会社が後から、

来月から勤務時間を短縮します

来月から週5日勤務を週3日勤務に変更します

などと一方的に変更する場合は、別の問題になります。

労働時間は、労働契約における重要な労働条件です。

そのため、会社が単に、

再雇用者だから

高齢者だから

という理由だけで、一方的に自由に変更できるものではありません。

実際に労働時間を変更できるかどうかは、

  • 雇用契約書でどのように定められているか
  • 就業規則にどのような規定があるか
  • 労働者が変更に同意しているか
  • 会社にどのような変更の必要性があるか

などを踏まえて検討する必要があります。


6 「勤務時間を短くする」ことと「勤務日数を減らす」ことは違う

労働時間の変更といっても、その内容はさまざまです。

例えば、

① 1日の勤務時間を短縮する

1日8時間勤務

1日6時間勤務

という変更です。

この場合、1日の勤務時間が短くなります。


② 勤務日数を減らす

週5日勤務

週3日勤務

という変更です。

この場合、1日の勤務時間が変わらなくても、1週間又は1か月の総労働時間が減少します。


③ 勤務時間と勤務日数の両方を変更する

週5日・1日8時間

週3日・1日6時間

というケースです。

この場合、総労働時間は大幅に減少することになります。

このように、単に「短時間勤務になった」というだけでは、実際にどの程度働き方が変わったのかは分かりません。

労働条件を比較する際には、1日の労働時間だけでなく、週・月単位でどの程度の労働時間になったのかを確認する必要があります。


7 労働時間が短くなれば、賃金も自由に下げられるのか

労働時間の変更では、賃金の問題も避けて通ることができません。

例えば、

1日8時間勤務から1日6時間勤務になった

場合、労働時間が減少している以上、賃金が一定程度減少すること自体は不自然ではありません。

しかし、

労働時間が減ったことだけを理由に、どのような賃金減額でも認められるわけではありません。

例えば、労働時間が25%減少したにもかかわらず、賃金が50%減少している場合には、

なぜそこまで賃金が減額されているのか

を確認する必要があります。

もちろん、労働時間と賃金を単純に比例計算すれば、常に適法・違法が決まるわけではありません。

基本給には、単純な時間給とは異なる考え方が採られている場合もあるためです。

しかし、少なくとも、

「労働時間がどの程度減ったのか」と「賃金がどの程度減ったのか」を比較すること

は、重要な出発点になります。


8 労働時間だけ短くして、仕事量が変わらない場合はどうなるか

実務上、問題になりやすいのが、

勤務時間は短くなったが、仕事の内容や仕事量はほとんど変わらない

というケースです。

例えば、定年前には1日8時間かけて行っていた業務を、再雇用後は、

1日6時間で終わらせるように

と言われる場合です。

このような場合、単に労働時間だけを見るのではなく、

  • 実際の業務量は減少しているのか
  • 責任の程度は変わっているのか
  • 時間内に業務を終えることが可能なのか
  • 時間外労働が発生していないか

などを確認する必要があります。

形式上は短時間勤務となっていても、実際には定年前と同程度の仕事を求められているのであれば、労働時間管理の問題や時間外労働の問題が生じる可能性があります。


9 短時間勤務を理由に「時間外労働はしない」と決められるのか

再雇用者を短時間勤務とする場合、会社が、

短時間勤務なので残業はありません

という制度を設けることがあります。

原則として、短時間勤務者について時間外労働をできるだけ発生させないようにすること自体は不自然ではありません。

しかし、実際には、

  • 業務量が多すぎる
  • 時間内に終わらない仕事を指示されている
  • 退勤後も仕事を続けることが常態化している

という場合には、単に「残業は禁止している」としても問題が解決するわけではありません。

会社が労働時間を短縮するのであれば、それに見合った業務量や業務内容になっているかも重要です。


10 労働時間の変更を検討する際のチェックポイント

定年後再雇用に伴って労働時間が変更される場合には、次の点を確認するとよいでしょう。

【労働者側】

  • 再雇用前に勤務時間についてどのような説明を受けたか
  • 雇用契約書にはどのように記載されているか
  • 1日の労働時間はどの程度変わったか
  • 勤務日数はどの程度変わったか
  • 総労働時間はどの程度減少したか
  • 賃金はどの程度変化したか
  • 実際の仕事量は減少しているか
  • 時間外労働が発生していないか

【企業側】

  • 再雇用後の勤務時間を明確に定めているか
  • 労働時間に応じた業務量になっているか
  • 賃金との関係を適切に整理しているか
  • 再雇用後に勤務時間を変更する必要がある場合の手続を確認しているか
  • 実際の労働時間を適切に管理しているか

11 定年後再雇用では「働き方全体」を見ることが重要

定年後再雇用における労働時間の問題は、

1日何時間働くのか

だけの問題ではありません。

労働時間を変更すると、

  • 賃金
  • 業務内容
  • 責任
  • 時間外労働
  • 休日
  • 社会保険の取扱い

など、さまざまな労働条件に影響することがあります。

そのため、

労働時間だけ短くなった

という一点だけを見るのではなく、定年前後で働き方全体がどのように変化したのかを確認することが重要です。

例えば、労働時間が短縮される一方で、責任や業務量も適切に軽減されているのであれば、定年前とは異なる働き方として制度が設計されていると考えやすいでしょう。

これに対し、労働時間だけを短縮し、定年前と同じ仕事を求めるような場合には、実際の勤務状況を詳しく確認する必要があります。


12 まとめ

定年後再雇用では、定年前と比べて労働時間や勤務日数が変更されることがあります。

しかし、

「定年後再雇用だから、会社が自由に労働時間を変更できる」わけではありません。

特に重要なのは、

① 再雇用契約を締結する際の条件変更なのか

② 再雇用契約を締結した後の変更なのか

を区別することです。

また、労働時間が短縮される場合には、

  • 実際の労働時間
  • 勤務日数
  • 総労働時間
  • 賃金の変化
  • 業務量
  • 時間外労働の有無

を総合的に確認する必要があります。

定年後再雇用においては、労働時間を短縮すること自体が問題なのではありません。

重要なのは、変更された労働時間に見合った働き方や労働条件が適切に設定されているかという点です。

シエル総合法律事務所では、定年後再雇用に関する労働時間、賃金、労働条件、雇止め、待遇差などについて、労働者・企業双方からのご相談に対応しています。

定年後の労働条件について疑問がある方、また、再雇用制度の設計や見直しを検討されている企業の方は、お気軽にご相談ください。

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