【第4回】定年後再雇用で給料はどこまで下げられる?賃金減額は違法になるのかを弁護士が解説

定年後再雇用

はじめに|「再雇用後に給料が半分になった」は違法?

「定年後再雇用になったら給料が大きく下がった」

「仕事内容は変わらないのに、年収がかなり減った」

定年後再雇用をめぐるご相談の中で、特に多いのが**“賃金減額”**の問題です。

会社から、

「定年後だから給料が下がるのは当然です」

と言われることも少なくありません。

しかし、本当にそうなのでしょうか。

確かに、定年後再雇用では一定の賃金見直しが行われることは珍しくありません。他方で、会社が自由に大幅な賃金減額をできるわけではありません。

今回は、

👉 「定年後再雇用で給料はどこまで下げられるのか」

について、裁判例も踏まえながら、弁護士が分かりやすく解説します。


1 定年後に給料が下がること自体は違法ではない

まず前提として、

👉 「定年後に給料が下がること自体」

は、直ちに違法になるわけではありません。

定年後再雇用では、

  • 役職を外れる
  • 責任範囲が軽くなる
  • 勤務日数・労働時間が変わる

など、働き方が変化することがあります。

そのため、一定程度の賃金見直しが合理的と判断される余地はあります。

もっとも、重要なのは、

👉 「どの程度下げてもよいのか」

という点です。


2 仕事内容が変わらないのに大幅減額は問題になることも

特に問題となりやすいのが、

「仕事内容はほとんど変わらないのに給料だけ大きく下がった」

というケースです。

例えば、

  • 同じ部署
  • 同じ業務内容
  • 同じ責任範囲
  • 同じ勤務時間

にもかかわらず、賃金だけが大幅に減額される場合、その合理性が問題となる可能性があります。

会社側が「定年後だから」という理由だけで説明することは、必ずしも十分とはいえません。


3 最高裁はどう考えている?(長澤運輸事件)

この問題を考える上で重要なのが、最高裁の

長澤運輸事件

です。

この裁判では、定年後再雇用された労働者と定年前社員との賃金差が問題となりました。

最高裁は、

👉 「再雇用だから賃金を下げてもよい」とは考えていません。

一方で、

👉 「職務内容や責任が変わるなら、一定の差は合理的な場合がある」

という考え方を示しました。

つまり、

“どれだけ仕事内容や責任が変わったのか”

が非常に重要になるということです。


4 どんな場合に賃金減額が認められやすい?

例えば、次のような場合には、賃金減額が認められやすい傾向があります。

(1)管理職から一般職になる場合

定年前は、

  • 部下の管理
  • 人事評価
  • 業績責任

などを担っていたものの、再雇用後はその責任を負わなくなった場合です。

このようなケースでは、責任軽減に応じた賃金見直しが一定程度認められやすくなります。


(2)働き方が軽くなった場合

例えば、

  • 勤務時間短縮
  • 残業なし
  • 出張や緊急対応の減少

など、負担が軽くなった場合も同様です。

働き方が変わる以上、一定の賃金差には合理性が認められることがあります。


5 逆に問題となりやすいケースは?

一方で、以下のようなケースでは問題となる可能性があります。

(1)仕事内容が実質的に同じ

肩書だけ外れたものの、

  • 実際の業務は同じ
  • 顧客対応も同じ
  • 現場責任も同じ

という場合です。

このようなケースで、

👉 給料だけ大きく下がっている

場合には、合理性が争われる余地があります。


(2)減額幅が大きすぎる

実務では、定年前から30%〜50%程度減額される例もあります。

もっとも、

  • 責任がほとんど変わらない
  • 業務内容が同じ

にもかかわらず、大幅減額がされている場合には、その合理性に疑問が生じることがあります。

特に、

👉 「なぜその金額まで下がるのか会社が説明できるか」

は重要なポイントです。


6 「同意したから問題ない」は本当?

会社から新しい雇用契約書を示され、

「これでお願いします」

と言われ、署名してしまうケースも少なくありません。

しかし、

👉 「署名した=必ず適法」

とは限りません。

実際には、

  • 選択の余地がほとんどなかった
  • 内容の説明が不十分だった
  • 不利益が著しく大きい

といった事情がある場合、問題となる余地があります。

「サインしたからもう争えない」と決めつける必要はありません。


まとめ|“定年後だから仕方ない”とは限らない

定年後再雇用では、一定の賃金見直しが行われること自体は珍しくありません。

しかし、

👉 「定年後だから自由に大幅減額してよい」

というわけではありません。

重要なのは、

  • 仕事内容は変わったのか
  • 責任は軽くなったのか
  • 減額幅は相当か
  • 説明は十分か

という点です。

仕事内容がほとんど同じなのに大幅な賃金減額がされている場合には、法的問題が生じる可能性があります。

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