はじめに|「定年後は当然に再雇用される」とは限らない
「65歳まで働けると聞いていたのに、再雇用を断られた」
「会社から『あなたは再雇用しません』と言われたが違法ではないのか」
定年後再雇用をめぐる相談の中で、実際に少なくないのがこのような再雇用拒否の問題です。
現在、多くの企業では、定年後も一定年齢まで働き続ける制度が整備されています。しかし、だからといって、すべての労働者が無条件に再雇用されるわけではありません。
もっとも、企業側も自由に再雇用を拒否できるわけではなく、法令の趣旨や裁判例を踏まえた一定の制約があります。
今回は、定年後再雇用を会社が拒否できる場合とはどのようなケースなのか、また、拒否が違法となるのはどのような場合なのかについて、弁護士が分かりやすく解説します。
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1 そもそも再雇用は法律上義務なのか?
まず前提として、企業には高齢者を再雇用する義務があるのでしょうか。
この点については、高年齢者雇用安定法により、企業には原則として65歳までの雇用確保措置が義務付けられています。
企業は、
- 定年の引上げ
- 継続雇用制度(再雇用等)の導入
- 定年制の廃止
などの措置を講じる必要があります。
もっとも、ここで誤解されやすいのが、
👉 「65歳まで必ず雇用される=会社は絶対に拒否できない」
という理解です。
実際には、一定の場合には再雇用拒否が認められる余地があります。
問題は、どのような場合に拒否が許されるのかです。
2 会社はどのような場合に再雇用を拒否できるのか?
再雇用拒否の可否について、法律上、明確な条文基準があるわけではありません。
もっとも、裁判例では、
👉 再雇用拒否に「客観的に合理的な理由」があり、「社会通念上相当」といえるか
という観点から判断される傾向があります。
これは、解雇法理に近い考え方です。
なぜなら、再雇用制度は形式的には新たな契約であるとしても、定年まで継続勤務してきた労働者の就労機会に重大な影響を与えるため、企業の裁量が無制限とは考えられていないからです。
特に、再雇用制度が事実上「原則再雇用」という運用になっている企業では、労働者側に再雇用への期待が生じやすく、拒否のハードルは高くなる傾向があります。
3 再雇用拒否が認められやすいケース
では、どのような事情があれば再雇用拒否が認められやすいのでしょうか。
代表例としては次のようなケースがあります。
(1)著しい勤務成績不良・勤務態度不良
例えば、
- 長期間にわたる重大な成績不振
- 業務命令違反の反復
- 周囲との深刻なトラブル
など、客観的に見て就労継続が困難と評価できる事情がある場合です。
もっとも、単なる評価の低さや、上司との相性といった抽象的事情だけでは足りません。
客観的資料に裏付けられた相応の問題性が必要になることが通常です。
(2)健康上の理由により就労継続が困難な場合
健康状態も問題となります。
ただし、ここでも重要なのは、
👉 「働けない」のか、「配慮すれば働ける」のか
です。
例えば、
- 業務遂行能力が著しく低下している
- 安全配慮上、就労継続が困難
という事情があれば拒否が認められる可能性があります。
一方で、軽度の持病や一定の配慮で就労可能な場合まで、当然に拒否できるとは限りません。
(3)重大な規律違反・懲戒事由
横領、重大な情報漏えい、ハラスメント等、企業秩序に重大な影響を与える事情がある場合も、再雇用拒否の合理性が認められやすくなります。
もっとも、過去に懲戒処分を受けていないにもかかわらず、定年時になって突然問題視するような場合には、合理性が否定される余地もあります。
4 「なんとなく評価が低い」では拒否できない
企業側として注意が必要なのは、
👉 「総合的に見て不安だから」
という曖昧な理由では、再雇用拒否の正当化は難しいという点です。
実際の紛争では、
- 評価記録
- 指導履歴
- 面談記録
- 健康診断結果
などの客観的資料の有無が重要になります。
逆にいえば、会社側の説明が抽象的で証拠に乏しい場合には、拒否の適法性が問題となる余地があります。
5 再雇用制度の運用実態も重要
再雇用拒否では、制度の運用実態も重要なポイントです。
例えば、
「原則全員再雇用」と説明されていた会社で、一部の従業員だけ拒否された場合には、その理由の合理性がより厳しく問われます。
一方で、以前から明確な基準が設けられ、一貫して運用されていた場合には、企業側に有利に働くことがあります。
つまり、
👉 “制度がどう書かれているか”だけでなく、“どう運用されてきたか”も重要
なのです。
まとめ|再雇用拒否には「合理的理由」が必要
定年後再雇用は、法律上の制度趣旨からして、企業が自由に拒否できるものではありません。
他方で、
- 勤務状況
- 健康状態
- 規律違反
などに重大な問題がある場合には、再雇用拒否が認められる余地もあります。
重要なのは、
👉 「客観的に合理的な理由」があり、「社会通念上相当」といえるか
という点です。
もし再雇用拒否に納得がいかない場合には、就業規則や制度内容、過去の運用状況を含めて検討する必要があります。


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