【第5回】定年後再雇用で仕事内容は変えられる? 職務変更・配置変更の適法性を弁護士が解説

定年後再雇用

はじめに

定年後再雇用では、賃金の引下げだけでなく、

  • 管理職を外された
  • 担当業務が変わった
  • これまでと全く違う仕事を任された
  • 専門職だったのに補助業務になった

といった「仕事内容の変更」が問題になることがあります。

会社から、

「再雇用だから仕事内容が変わるのは当然です」

と言われることもありますが、本当に会社は自由に職務内容を変更できるのでしょうか。

今回は、定年後再雇用における職務変更・配置変更の法的な考え方について解説します。


定年後再雇用では仕事内容の変更自体は認められる

まず前提として、定年後再雇用において仕事内容が変更されること自体は珍しいことではありません。

実際、多くの企業では、

  • 管理職から一般職への移行
  • 責任範囲の縮小
  • 若手社員への権限移譲
  • 勤務負担の軽減

などが行われています。

法律上も、定年後再雇用は定年退職後に新たな労働契約を締結する形式を採ることが多く、会社には一定の範囲で再雇用後の労働条件を設定する権限が認められています。

そのため、

「定年前と全く同じ仕事をさせなければならない」

というわけではありません。


会社が自由に仕事内容を変更できるわけではない

もっとも、ここで重要なのは、

仕事内容の変更が認められることと、会社が自由に変更できることは別問題

であるという点です。

定年後再雇用は形式的には新たな契約ですが、実際には同じ会社で働き続ける継続雇用制度です。

また、高年齢者雇用安定法は、高齢者の就業機会を確保し、その経験や能力を活かすことを重要な目的としています。

そのため、

  • 経験や能力を全く活かせない仕事しか与えない
  • 事実上の退職勧奨として配置転換を行う
  • 形式的な職務変更だけを理由に大幅な処遇切下げを行う

といった運用については問題となる可能性があります。


裁判所は「実際に何が変わったのか」を重視する

定年後再雇用における職務変更そのものを直接判断した裁判例は多くありません。

しかし、定年後再雇用労働者の待遇差が争われた裁判例では、裁判所は一貫して、

「実際の仕事内容や責任の程度」

を重視しています。

例えば、最高裁平成30年6月1日判決(長澤運輸事件)は、定年後再雇用労働者と正社員との待遇差の合理性を判断するに当たり、

  • 職務内容
  • 責任の程度
  • 配置変更の範囲
  • その他の事情

などを総合的に考慮しました。

また、最高裁令和2年10月13日判決(名古屋自動車学校事件)も、定年後再雇用という形式だけでは待遇差を正当化できないことを示しています。

これらの裁判例から読み取れるのは、

役職名や契約形式ではなく、実際の仕事の中身を見る

という裁判所の姿勢です。


どのような場合に職務変更は合理的と評価されるのか

例えば、

  • 管理職を外す
  • 人事評価権限をなくす
  • 予算管理責任を軽減する
  • 若手社員への指導業務に移行する

といった変更は、責任軽減や権限承継という合理的な目的があるため、適法と評価されやすい傾向があります。

また、高齢化に伴う身体的負担への配慮や健康状態への対応なども合理的な理由となり得ます。


問題となりやすいケース

反対に、次のようなケースでは法的問題が生じる可能性があります。

① 実際には仕事内容がほとんど変わっていない

役職名だけ変更されているものの、

  • 業務内容は同じ
  • 責任もほぼ同じ
  • 求められる能力も同じ

という場合です。

このようなケースでは、

「本当に職務変更があったのか」

という点自体が問題となります。

② 経験や能力を全く活かせない仕事への変更

長年培ってきた専門性と無関係な単純作業のみを担当させるような場合です。

もちろん、定年前と同じ仕事である必要はありません。

しかし、

高齢者の経験や能力を活用する

という継続雇用制度の趣旨との関係で問題となることがあります。

③ 実質的な退職誘導と評価できる場合

例えば、

  • 遠隔地勤務しか提示しない
  • 著しく低い職位しか提示しない
  • 不合理な業務内容を提示する

などの事情がある場合には、再雇用辞退を促すための措置ではないかが問題となります。


仕事内容の変更と賃金減額はセットで検討される

実務上、職務変更の問題は賃金減額の問題と密接に結び付いています。

会社は、

「仕事内容が軽くなったから給料を下げる」

という説明を行うことがあります。

しかし、

  • 実際に仕事内容はどれだけ変わったのか
  • 責任はどれだけ軽くなったのか
  • 減額幅は相当なのか

を総合的に検討しなければなりません。

単に職務名を変更しただけで大幅な賃金減額を正当化できるわけではないのです。


まとめ

定年後再雇用では、会社が一定の範囲で職務内容や配置を見直すこと自体は認められています。

しかし、

「再雇用だから自由に変更できる」

というわけではありません。

裁判所は、形式的な肩書きや契約名称ではなく、

  • 実際の仕事内容
  • 責任の程度
  • 経験や能力との関連性
  • 処遇との均衡

といった実質的な事情を重視しています。

再雇用後の仕事内容について疑問を感じている場合には、職務変更そのものだけでなく、賃金やその他の処遇との関係も含めて検討することが重要です。

次回は、定年後再雇用と「同一労働同一賃金」の関係について解説します。

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