退職代行サービス「モームリ」代表者逮捕は、退職代行そのものの問題ではない

時事

― 弁護士法違反が問われた「本当の理由」を弁護士が解説 ―

 2026年2月、退職代行サービス「モームリ」の代表者らが、弁護士法違反の疑いで逮捕されたとの報道がなされました。このニュースを受けて、「退職代行サービスは違法なのではないか」「退職代行を使うと危険なのではないか」といった不安の声が広がっています。

 しかし、結論から言えば、今回の逮捕は退職代行サービス自体が違法だからではありません。
問題となったのは、弁護士でない者が、報酬を得て法律事務をあっせんしていた点にあります。

 本記事では、弁護士の立場から、今回の事件の法的ポイントと、退職代行サービスの適法・違法の境界線について詳しく解説します。


退職代行サービスは原則として違法ではない

まず前提として整理しておくべきなのは、退職代行サービスそのものは違法ではないという点です。

労働者が退職する際、

  • 自分で会社に退職の意思を伝える
  • 家族や第三者に「伝言」を依頼する

このいずれも法律上禁止されていません。
退職代行サービスが行う「本人に代わって退職の意思を伝える行為」も、単なる意思伝達にとどまる限り、違法とはされません。

そのため、今回の事件をもって
「退職代行=違法」
「退職代行サービスは使うべきではない」
と理解するのは、明確な誤りです。


問題となったのは「非弁行為」ではなく「非弁あっせん」

では、なぜ「モームリ」の代表者らは逮捕されたのでしょうか。

今回問題視されたのは、弁護士でない者が、報酬を得て法律事務をあっせんしていた点です。

弁護士法72条は、次のように定めています。

弁護士でない者は、報酬を得る目的で、法律事務を取り扱い、またはそのあっせんをしてはならない。

ここで重要なのは、「法律事務を行うこと」だけでなく、
「法律事務をあっせんすること」も禁止されているという点です。


「法律事務」とは何か

法律事務とは、一般に次のような行為を指します。

  • 未払い残業代や賃金の請求
  • 退職条件(退職日・有給消化・退職金など)の交渉
  • 労働条件をめぐる紛争の解決交渉

これらは、法律知識を前提に、相手方と権利義務を調整する行為であり、弁護士資格を持つ者にのみ認められた業務です。


今回の事件の核心:「弁護士でない者が報酬を得て法律事務をあっせんした点」

報道によれば、今回の件では、

  • 退職代行サービス運営者が
  • 退職に関するトラブルを抱える利用者を
  • 特定の弁護士に紹介し
  • その対価として報酬を受け取っていた

この点が、**弁護士法72条に違反する「非弁あっせん」**に該当すると判断された可能性があります。

つまり、

  • 退職代行サービスを運営していたこと
  • 退職の意思を伝えていたこと

それ自体が問題とされたわけではありません。

問題は、弁護士でない者が「法律事務の橋渡し役」となり、報酬を得ていた点にあるのです。


退職代行サービスと弁護士業務の「適法ライン」

整理すると、次のようになります。

適法とされる範囲

  • 退職の意思を会社に伝えるだけ
  • 交渉や条件調整を一切行わない

違法となる可能性がある行為

  • 退職条件について会社と交渉する
  • 未払い賃金や残業代の話を持ち出す
  • 弁護士を紹介して報酬を得る

この「一線」を越えた瞬間、弁護士法違反のリスクが生じます。


弁護士による退職交渉が持つ決定的な違い

弁護士に依頼した場合、上記のような問題は一切生じません。

弁護士は、

  • 法律上の代理人として
  • 適法に交渉を行い
  • 退職条件や金銭請求まで一体的に対応

することができます。

そのため、

  • トラブルを伴う退職
  • 会社との交渉が必要なケース
  • 未払い賃金・残業代が絡む場合

では、最初から弁護士に依頼する方が、結果的に安全かつ確実であるケースが少なくありません。


まとめ:今回の逮捕が示す本当の教訓

今回の事件が示しているのは、
「退職代行サービスは危険だ」ということではありません。

本質は、
法律事務とそうでない業務の線引きを無視したビジネスモデルには、明確な法的リスクがある
という点です。

退職は労働者の正当な権利です。
だからこそ、その手続を誰に、どのように任せるのかを正しく理解することが重要です。

少しでも法的な交渉が必要になりそうな場合には、早い段階で弁護士に相談することを強くおすすめします。

シエル総合法律事務所|大阪で税務・労務・解雇/退職/残業代に精通した弁護士
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