
新生活に向けて賃貸物件を探し、賃貸借契約を締結する際、
「言われるがまま契約した結果、不要な費用を支払っていた」
「退去時に思わぬトラブルになった」
というご相談は少なくありません。
賃貸借契約は身近な契約である一方、法律上のルールを知らないことで、借主が不利な立場に立たされやすい分野でもあります。
ここでは、部屋探しの段階から契約・退去まで、特に注意すべきポイントと、事前に知っておくことで“得をする”実務的な対策を弁護士の視点から解説します。
部屋探しの段階で注意すべき「おとり物件」
内見したい物件を指定して不動産会社を訪れたところ、
- 「その物件は、ちょうど契約が決まりました」
- 「同条件の別の物件をご紹介します」
と言われ、他の物件を次々に勧められた経験をお持ちの方も多いでしょう。
このようなケースでは、最初に提示された物件が
いわゆる「おとり物件(客引き物件)」である可能性があります。
おとり物件とは、実際には契約させる意思のない、またはすでに募集が終了している物件を広告に掲載し、来店させること自体を目的とする手法です。
業者にとって都合の良い物件に誘導されるリスク
来店後に紹介される物件は、
- 自社管理物件
- 仲介手数料を多く得られる物件
- 空室期間が長く、早く決めたい物件
など、不動産会社側に都合の良い物件であることが少なくありません。
結果として、本来希望していた条件から外れた物件を、
十分な比較検討ができないまま契約してしまうおそれがあります。
おとり物件を避けるための有効な対策
内見希望物件は「現地待ち合わせ」を指定する
このようなリスクを避けるためには、
不動産会社に問い合わせる際、
「店舗ではなく、内見希望物件の現地で待ち合わせをしたい」
と伝えることが非常に有効です。
現地待ち合わせを指定することで、
- 実際に内見可能な物件か
- 本当に募集が継続している物件か
を事前に確認することができます。
現地待ち合わせを渋る場合や、来店を強く求められる場合には、
おとり物件である可能性を疑うべきでしょう。
業者指定のオプション費用に要注意(アルコール消毒等)
賃貸借契約の初期費用の内訳を見ると、
- 室内消毒費用
- アルコール消毒費用
- 抗菌・防臭施工費
といった業者指定のオプション費用が、
特に詳しい説明もなく含められていることがあります。
しかし、これらのオプションは、
- 法律上、必ず支払わなければならないものではなく
- 借主が自由に断ることが可能
です。
実際には、費用に見合う効果が期待できないケースも多く、
「当然必要な費用」と誤解したまま支払ってしまう方も少なくありません。
契約前に、
✔ どの費用がオプションなのか
✔ 任意か必須か
✔ 断ることができるのか
を必ず確認し、不要なオプションが含まれていないかチェックすることが重要です。
火災保険は業者指定で加入する必要はありません
賃貸借契約時、特定の火災保険への加入を求められることがありますが、
業者指定の保険に加入しなければならない法的義務はありません。
補償内容が契約条件を満たしていれば、
借主が自ら選んだ火災保険に加入することが可能です。
業者指定の保険は割高なケースも多いため、
事前に内容と保険料を比較することで、毎年の固定費を抑えられる可能性があります。
仲介手数料は「原則として家賃の半月分まで」
仲介手数料についても注意が必要です。
宅地建物取引業法では、
借主が負担する仲介手数料は、原則として家賃の0.5か月分まで
とされています。
家賃1か月分を負担する場合には、
事前の説明と借主の明確な同意が必要です。
「当然1か月分かかるものだと思っていた」
というケースでも、法的に問題となる可能性がありますので、
重要事項説明書や契約書の記載を必ず確認しましょう。
退去時トラブルが多い「原状回復条項」に注意
賃貸借トラブルで最も多いのが、退去時の原状回復費用をめぐる問題です。
通常の使用による経年劣化や自然損耗まで、
借主に負担させることは原則として認められていません。
にもかかわらず、
- 原状回復費用はすべて借主負担
- 退去時は無条件で高額な費用を請求する
といった不当に借主に不利な条項が定められていることもあります。
これらは、内容次第で無効となる可能性があります。
「当たり前」と言われても、鵜呑みにしないことが重要です
賃貸借契約では、
「みなさんこの条件です」
「一般的です」
と言われることがよくあります。
しかし、一般的であることと、法的に妥当であることは別問題です。
部屋探しの段階から契約内容を冷静に確認することで、
不要な費用負担やトラブルを未然に防ぐことができます。
賃貸借契約に不安がある場合は弁護士へご相談ください
- おとり物件ではないか不安
- 初期費用に不要なオプションが含まれている
- 契約内容が借主に不利ではないか
- 退去時に高額な原状回復費用を請求されている
このような場合には、早めに弁護士へご相談ください。
新生活を安心してスタートさせるためにも、専門家の視点をぜひご活用ください。



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