派遣労働者として働いている場合、「派遣先から、来月以降は来なくてよいと言われた」「派遣先との契約が終了したと言われた」というケースがあります。
このような場合、派遣先で働けなくなった以上、自分の雇用契約も終了するのではないかと思われるかもしれません。
しかし、派遣先との契約が終了することと、派遣労働者本人の雇用契約が終了することは、法律上別の問題です。
一方、派遣ではなく会社に直接雇用されている有期契約労働者について、契約期間満了時に契約を更新しない場合には、いわゆる「雇止め」の問題となります。
この記事では、派遣先の都合による契約終了と、直接雇用の場合の雇止めの違いについて、弁護士が分かりやすく解説します。
1 派遣には「2つの契約」がある
派遣労働の場合、基本的には次の2つの法律関係があります。
① 派遣元会社と派遣労働者との間の雇用契約
派遣労働者は、派遣先の会社ではなく、原則として派遣元会社との間で雇用契約を締結しています。
そのため、給与の支払いや雇用契約上の使用者としての立場は、基本的に派遣元会社にあります。
② 派遣元会社と派遣先会社との間の労働者派遣契約
これとは別に、派遣元会社と派遣先会社との間には、労働者を派遣するための契約があります。
派遣先会社は、この契約に基づいて派遣元会社から労働者の派遣を受けています。
したがって、派遣の場合には、
「派遣元会社 ⇔ 派遣労働者」
という雇用契約と、
「派遣元会社 ⇔ 派遣先会社」
という労働者派遣契約が、別々に存在しています。
この点が、直接雇用の場合との大きな違いです。
2 「派遣先との契約終了」と「雇止め」は同じではない
例えば、派遣元会社Aから会社Bに派遣されている労働者について、会社Bが「来月から派遣を受け入れない」と決めたとします。
この場合、A社とB社との間の労働者派遣契約が終了したり、派遣就業が終了したりすることはあり得ます。
しかし、それだけで、
「A社と労働者との雇用契約も終了する」
ということにはなりません。
派遣先で働くことができなくなったとしても、派遣元会社との雇用契約が当然に終了するわけではないからです。
そのため、派遣元会社としては、契約内容や雇用期間などに応じて、別の派遣先を紹介するなどの対応を検討することになります。
もちろん、派遣元会社と労働者との雇用契約自体が有期契約であれば、契約期間満了の際に更新されないという問題が生じることはあります。
しかし、その場合に問題となるのは、あくまで派遣元会社と労働者との間の雇用契約が更新されるかどうかという点です。
3 直接雇用の場合は「雇止め」の問題になる
これに対して、会社に直接雇用されている有期契約労働者の場合には、法律関係が異なります。
例えば、会社Cと労働者との間で6か月間の有期労働契約が締結されているとします。
そして、契約期間が満了する際に、会社Cが「次の6か月間は契約を更新しません」とした場合、いわゆる雇止めの問題になります。
この場合には、労働契約法19条が問題となることがあります。
同条は、一定の場合において、使用者による有期労働契約の更新拒絶(雇止め)を制限し、一定の要件の下で、労働者からの更新申込みを使用者が承諾したものとみなす仕組みを定めています。
したがって、単に「契約期間が終了したから、必ず雇用も終了する」というわけではありません。
特に、
・過去に契約が何度も更新されている
・実質的に期間の定めのない契約と異ならない状態になっている
・労働者に契約更新への合理的な期待がある
といった事情がある場合には、雇止めの適法性が問題となる可能性があります。
4 派遣労働者についても「雇止め」が問題になることはある
ここで注意が必要なのは、派遣労働者には雇止めの問題が一切ないというわけではないということです。
派遣労働者であっても、派遣元会社との間で有期労働契約を締結している場合があります。
例えば、
「派遣元会社との契約期間が1年間」
となっているケースです。
この場合、派遣先会社が派遣契約を終了したことを理由として、派遣元会社が労働者との雇用契約を更新しないことがあります。
このとき問題となるのは、
派遣先との派遣契約が終了したことそのものではなく、派遣元会社と労働者との有期労働契約を更新しないことの適法性
です。
したがって、派遣先から「もう来なくてよい」と言われた場合には、
「これは雇止めなのか?」
と考えるだけではなく、
「誰との、どの契約が、いつ終了するのか」
を確認することが重要です。
5 派遣先の都合だけで派遣元との雇用契約が終了するわけではない
派遣労働に関する相談で特に注意したいのが、
「派遣先が契約を打ち切ったので、あなたとの雇用契約も終わります」
という説明です。
派遣先と派遣元との契約関係と、派遣元と労働者との雇用契約は別のものです。
そのため、派遣先との契約が終了したという事実だけから、直ちに派遣元会社との雇用契約まで終了するとはいえません。
実際には、
・派遣元との雇用契約が無期契約なのか有期契約なのか
・有期契約の場合、その契約期間はいつまでなのか
・派遣先との契約はいつ、どのような理由で終了したのか
・派遣元会社から別の派遣先を紹介されたのか
・雇用契約書や就業条件明示書にどのような記載があるのか
・派遣元会社から退職や契約終了についてどのような説明を受けたのか
などを確認する必要があります。
6 「派遣先で働けなくなった=失職」ではない
派遣労働については、
「派遣先で働けなくなった」ことと「派遣元との雇用契約が終了した」ことを区別することが重要です。
例えば、派遣先との契約が終了した後、派遣元会社が別の派遣先を紹介し、そこで就業することになれば、派遣元との雇用関係は継続します。
一方、派遣元会社との有期労働契約が期間満了となり、派遣元会社が契約を更新しないのであれば、そこで初めて雇止めの問題が生じる可能性があります。
つまり、派遣労働者が「派遣先から契約終了を告げられた」というだけでは、直ちに「雇止めされた」と判断することはできません。
7 まとめ
派遣労働と直接雇用では、契約関係の構造が異なります。
派遣労働の場合には、
派遣元会社と労働者との「雇用契約」
と、
派遣元会社と派遣先会社との「労働者派遣契約」
が別々に存在します。
そのため、派遣先の都合によって派遣就業が終了したとしても、それだけで派遣元会社との雇用契約まで終了するわけではありません。
これに対して、会社に直接雇用されている有期契約労働者について、契約期間満了時に更新されない場合には、労働契約法19条に基づく雇止めの問題が生じることがあります。
派遣先から「もう来なくてよい」と言われた場合には、まず、
「派遣先との契約が終了するのか」
「派遣元との雇用契約が終了するのか」
を区別して考えることが重要です。
雇用契約の終了をめぐる問題では、契約書や就業条件明示書、これまでの更新状況、会社からの説明内容などによって結論が変わることがあります。
派遣先から契約終了を告げられた場合や、派遣元会社から雇止め・退職を求められた場合には、早めに弁護士に相談することをおすすめします。


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